ぼくのパパス、
わたしのノンノン。

Vol.21
現役大学生の
古着屋店主
市村さんが語る!
80年代DCブランドと
パパスの魅力って?

長野県上田市に、80年代のDCブランドに特化した品揃えの古着屋さんがあり、しかも現役大学生が営むそのお店には、パパスの商品も並んでいるらしい・・・。そんな噂を聞きつけたパパスは早速現地を視察! 紹介者であるスタイリスト兼「エディストリアルストア」店主の小沢宏さんとともに、コラボレートイベントまで企画しちゃいました! 今回はWebマガジン「ぼくのおじさん」とともにお届けします!

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80年代DCという新しい古着のジャンル

前編はウェブマガジン「ぼくのおじさん」から!

1992年のTAKEO KIKUCHIのスタジャン。袖には大きく「JAPON」とワッペンが配されている、かなり大胆なデザインです。

もともと80年代に化粧品店だったショップ空間に並ぶ、80年代のDCブランドや資料の数々。このショップの成り立ちは前編を読んでもらいたいのですが、現役大学生にして店主を務める市村修蔵さんの知識量は半端じゃない!
SNOB
住所/長野県上田市中央1-9-9
営業日/月曜アポイント制、木・金曜14:00~20:00、土・日曜12:00~19:00
※市村さんがひとりで営業しているお店なので臨時休業あり。Instagramで確認の上ご来店ください!

――市村さんが運営する「スノッブ」のお客さんはどんな方々なんですか?

市村修蔵 リアルタイム世代の方と、ぼくに共感してくれた80年代好きの若い方、あとは〝Y2Kファッション〟(2000年代スタイル)みたいな方々に分かれますね。ぼくの洗脳の甲斐あって全身ニコルの同級生もいます(笑)。

――噂によると今は国内外の若い子たちの間で、2000年代に一世を風靡したマルイ系のブランドが流行っているらしいですね。 大量にジッパーがついたジーンズとか(笑)。東京では市村さんが打ち出しているような世界観のお店ってあるんですか?

市村 ちょっとはあるんですが、ぼくみたいに歴史を掘って紹介するようなお店はないかもしれせんね。手放しで売れたら、それはそれですごいんですけど。

――買い付けはどんな場所でされているんですか?

市村 基本的には国内なんですが、このジャンルにはいわゆるディーラーさんがいないので、フリマや卸業者さんをまわったり、個人から集めることも多いです。なんとかこのコンセプトを維持すべく、地方の「快活クラブ」に寝泊まりしながら必死でやってます(笑)。

小沢宏 価値があるって思われてないもんね。

市村 時給換算すると200円ですね(笑)。

新しい解釈が時代を前に進める

店主の市村さんをして「これは売りたくない」と言わしめる、菊池武夫さんがデザインしていた頃のビギのオールインワン!

――個人的に一番お好きなブランドってどこなんですか?

市村 一番好きなのは・・・難しいですね(笑)。いくつか挙げるとすれば、やっぱりビギとニコルです。

――といっても、時期によってデザインのテイストはだいぶ違うんですよね?

市村 そうですね。ビギはきっちりした格好をしたいなら、絶対に84年まで在籍されたタケ先生(菊池武夫さん)の時代の服がいいと思います。このツナギはまさにそうなんですが。あとは70年代に遡りますが、ドラマ『傷だらけの天使たち』に登場するようなジャケットやスーツもカッコいいですね。カジュアルな服なら今西祐次さんがデザインされた服もいいですよ。多分赤のタグと銀色の大文字タグのときが、今西さんの時期じゃないかと思うんですが・・・。

今西祐次さんがメンズビギのデザインを担当されていた、1980〜90年代前半頃のスタジャンとニット。「このスタジャン、なぜか色んなところにベンチレーションが入ってるんですよ(笑)」と市村さん。

DCブームを象徴する人気アイテムである、ビギのスタジャンの品揃えにはこだわりが。

小沢 こんな若いヤツがいるぞって今西さんに教えてあげたいね(笑)。

――そういう情報はどうやって調べるんですか?

市村 統計をとりますね。雑誌などの資料はもちろんメルカリの写真や実物を全部まとめて照らし合わせて、これはこの時期だろうって。そうやって理解しないとお客さんにすすめられないですし。ニコルも大好きなんですが、松田光弘さんの時代の服は集めるのが難しくて、今まで数着しか見たことがありません。小林由紀夫さん時代の服は比較的探しやすいんですが、スラックスとかめちゃくちゃカッコいいですよ。ヴィンテージモチーフなのに、この生地使うの? 嘘やろって(笑)。

服好きを唸らせるディテールの数々が、小林由紀夫さん期のニコルの特徴だと熱く語る市村さん。

小沢 リアルタイム世代のボクとしては、DCブームって黒歴史一歩手前な時代でもあるんだけど。4つボタン段返りでしかもくるみボタンって、ちょっと過剰なんだよ(笑)。

――小沢さんはあんまりDCにはハマらなかったんですか?

小沢 アンチでもないけど、黎明期のセレクトショップでインポートを買っていたクチだからね。でも高橋幸宏さんのブリックスモノだけは勝手に認めてた(笑)。

市村 ブリックスモノはDCブランドの中でも圧倒的に高くて、もう手がつけられないです。

小沢 DCブランドって当時でいうとマジョリティ側で、ボクはある意味マイノリティ側にいたから、勝手に偏見を抱いていた部分もあるんだよね。でもそんな服がぐるりと回って、彼のような若者によってちょっと過剰にデフォルメされた形で、こういう環境に置かれていることが、すごく面白いなって。

――それは確かにそうですね! ある意味90年代は60年代カルチャーの焼き直し的な意味合いもあるし、どの世代もやってきたことではあるんでしょうね。

小沢宏
1964年生まれ、長野県上田市出身。大学在学中に雑誌「POPEYE」の編集アシスタントとして活動をスタート。その後スタイリストとして独立し、雑誌や広告のディレクションから、セレクトショップへの参画、自身のブランドのデザインや運営など、幅広い分野で活躍する。2022年5月に故郷である上田市にて〝雑誌の3D化”をコンセプトにしたセレクトショップ「EDISTORIAL STORE」をオープン。〝LIVE STOCK〟というコンセプトを掲げ、新たな発信に取り組む。

小沢 それってある種の伝言ゲームなんだけど、すべて忠実になぞる必要なんてないし、そのデフォルメから面白いカルチャーが生まれて、時代が前に進んでいくわけだからね。だからこれからのボクたちの役目は新しいバトンをつくって、彼のような若い世代の誰かに手渡すことなんじゃないかなって思ってる。

80年代DCは〝無駄の美学〟

――市村さん的には、これから拡充させていきたいブランドってあるんですか?

市村 その質問はロマンすぎますね〜(笑)。もういくらでもあるんですが、リネア・フレスカっていう英保優之(あぼまさゆき)さんのブランドは一度でいいから扱いたいです。

ネットにもほとんど情報が存在しない、リネア・フレスカ!

――それは全く知らないです(笑)!

小沢 ボクも知らない(笑)。でも今では知られていないブランドっていっぱいあるからね。ミュージシャンの大口広司さんがやっていた「インセンス」とか、本当にカッコよかったから。

市村 比較的トラッド派の方にはエーボンハウスをおすすめしたいですね。レザーのコートなんて、水牛の角を使ったボタンが取れないように根巻きしたうえで、さらに力ボタンまで付けてるし、そういうディテールを見ると「ああ、優しいんだな〜」なんて(笑)。

クラシックなつくりのよさに惹かれるというエーボンハウスのムートンコート。接客上手の市村さんにつられて、取材担当者が思わず購入しちゃいました!

――その見方は意外だなあ。デザインだけじゃなくて、つくりそのものにも興味があるんですね。

市村 DCブランドの服って、無駄の美学があるんですよ。景気がよかったことも大きいんだと思いますが、生地や縫製にコストカットの意図が全く見えないというか。それに対して今の服って、ぼくから見ると合理的すぎるんですよね。

小沢 今はMDの時代だけど、当時はデザイナーの時代だったから、原価率という文脈でものづくりをしていなかったことは確かだよね。

市村 〝レーヨンポリウールシルクコットン混紡〟とか(笑)、生地も全然違うんですよ。当時は日本の地方に中小の生地メーカーがたくさん残っていて、地域ごとの特性を活かした生地づくりをしていたと聞きますが、本当にロマンですね。

――無駄を楽しむ文化というのはひとつありますね。

DCカルチャーにおけるパパスの立ち位置って?

市村 実はぼく、最近パパスが気になって色々と調べているんです。DCブランドという文脈でいうとちょっと異質なんですが、生地や縫製が面白い。ぼくの地元の神戸はトラッドが強くてタータンチェックの文化があるんですが、パパスのチェック柄からはそういう可愛らしさも感じますし。でも、ぼくが買ってきたファッション誌には全く出てこないので、情報がなかなか手に入らないという。そういえば母親に聞いたら「明石家さんまさんが着ていた」って言ってました(笑)。

この日市村さんが着ていたのがパパスのチェックシャツ。レーヨンとキュプラとコットンを混紡した生地や、胸ポケットの縫製など、ベーシックながら凝ったつくりに惹かれるとのこと。

――ああ、パパスは創業者の意向もあって、ほぼファッション雑誌には商品を掲載してこなかったですからね。ちなみに明石家さんまさんが着ていたスウェットは、80年代後半にものすごく売れたそうです。

市村 実は海外で一度大量にシャツを買い付けたことがあるんですよ。いわゆる〝ビービーケーケー期〟のものを。めっちゃオシャレですよね。

――ビービーケーケーは株式会社パパスの前身となった会社のことですけど(笑)、そんな〝期〟があるなんて知りませんでした。これなんて、まさにパパスがこだわっている手捺染ですね! 

今でもパパスが定番アイテムとしてつくり続けている、手捺染のプリントシャツ。伝統工芸的な手法で染めた自慢の逸品です。

こちらも古いパパスのアウターですが、今つくっているものとデザインがさほど変わらないのがパパスの特徴かもしれません。

市村 そうなんですよ。このプリントシャツは〝(株)パパス期〟なんですが、スノーボード柄とか、小さな襟が可愛いですよね。だからカジュアルスタイルとしての提案がしやすいのがいい。ビービーケーケー期はデニムジャケットとかメルトンのブルゾンもカッコいいので超ほしいです。

――パパスって、大学生の視点からするとちょっとわかりにくかったりしないですか?

市村 いや、身幅の設定も今っぽいし、どこにもないようなテキスタイルも魅力的ですよ。あとはこのウールのセットアップなんて、パンツのダーツの入れ方が特殊でものすごく凝っています。しかもムーアブルック社のメルトン生地を使っているなんて、すごくないですか? だから最近はセットアップとかハリスツイードのジャケットを狙っていますね。ハリスはかなり高いんですけど(笑)。

今はなき英国の生地メーカー、ムーアブルック社のメルトンを使ったセットアップ。80’sっぽい広めの肩幅ながら、ほどよいゆとりや低めのゴージ位置は、いかにもパパス的。パンツの膝下から裾にだけダーツを入れたデザインも、市村さんのお洒落心をくすぐりました。ちなみに足元に合わせているのは英国の老舗ビスポーク靴メーカーであるヘンリー・マックスウェルの靴! 超破格値で手に入れたそうですが、市村さん、かなりの目利きです。

――あ、高いんですね。

市村 パパスって年代によってデザインがブレないので、相場感が今のモノとあまり変わらない傾向があるんですよ。それが買い付けの難しさにもつながっています。〝宮古島アイランド〟のスウェットとか、シューティングベストとか、すごいんですけどね。チェーンステッチの刺繍、ヤバって(笑)。

創業デザイナーがクレー射撃にハマっていたときにつくった、シューティングベスト。本格的なデザインながら、チェーンステッチによる刺繍やポケットのプリント生地使いに、パパスらしさが漂っています。

――いやあ、市村さん、すごいなあ。今やってることは、お母様になんて言われているんですか?

市村 「あんたその状態でおじさんになったらちょっとイタくない?」って言われてます(笑)。

小沢 すごく的確な判断(笑)。

市村 自分の趣味でもあるから集めすぎちゃって、正直全然お金もないですし。まだ大学生だから一応仕送りは月2万円もらってるんですが、今のところそれだけは絶対死守しようと思ってます(笑)。それでも、数年後にはちゃんとビジネスを成り立たせるつもりで頑張ってはいるんですが。

――もうすぐ大学4年生になるわけですが、卒業後のことは考えているんですか?

市村 この仕事があまりに楽しすぎて、ちょっと就職は無理そうです(笑)。

――実はそんな市村さんと、その活動をサポートする小沢さんが、この3月にパパスの丸の内本店で、私たちのヴィンテージウエアを集めたポップアップストアを開催してくれるんですよね?

小沢 そうなんですよ。この間打ち合わせをしたら、彼が立派な資料をつくって理路整然とプレゼンしてましたけど、すごく楽しみです。

市村 超近々なんですが、頑張って思い出をつくらせていただきます!

パパスのヴィンテージが丸の内店に来る!

パパスの史上初となるヴィンテージウエアのポップアップストアが、市村さんと小沢さんのご協力によって、3月13〜20日にかけて、「パパス丸の内本店」で開催されます!

このイベントは、この3月に東京の各エリアで開催されるクリエイティブの祭典「東京クリエイティブサロン2025」の一環として、小沢宏さんディレクションのもと丸の内エリアで行われる「LIVE STOCK MARKET」に、パパスが参加するものです。

取り扱う商品は、「SNOB」の市村さんが若々しくマニアックな視点でピックアップした個体。どんな構成になるのか、私たちも楽しみでなりません!

ちなみに期間中に丸の内の「パパスカフェ」をご利用いただいたお客様には、このポップアップストアで利用できる1000円チケットを差し上げますので、ぜひご利用ください。

PAPAS×SNOB POP UP STORE
In LIVE STOCK MARKET
in MARUNOUCHI

【期間】
2025年3月13日(木曜)〜20日(木曜・祝日)

【ショップ情報】
パパス丸の内本店
住所/東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル1F

電話番号/03-3284-8847

営業時間/11:00〜19:00
(併設のパパスカフェは11:00〜19:30※LO19:00)

定休日/不定休