Vol. 1
ふつうだけど
普通じゃない
ブランド「パパス」
ってなに?
パパスとは、1986年に誕生したブランドです。今年で37歳です。長いことやっているから、もう創設当時のことを知らない人も増えてきました。どんなふうにしてパパスが生まれたのか? どんなことにこだわってものづくりをしているのか? そして、そもそもパパスってどんな意味なのか・・・? そこでパパスは、この春から新しいウェブマガジンをつくって、私たちのことをもっと多くの皆さんに知ってもらおうと思いました。肩肘はらない「ふつうの服」をつくっているパパスのところに、気軽に遊びに来てください。
- # パパス
- # ふつうの服
- # アーネスト・ヘミングウェイ
DCブランドの異端児パパスの誕生
パパスというブランドがスタートしたのは1986年。マドモアゼルノンノンというウィメンズブランドから、派生するような形で始まりました。80年代後半といえば、今でいうバブルのはじまりから絶頂期にかけてのこと。東京の街のいたるところでキラキラのシティポップが流れ、若者からおじさんまでが張り切ってブランドの服で身を包み、夜ごと華やかなパーティに繰り出す・・・ちょっと誇張するならば、みんながちょっとずつ背伸びをしていた時代だったかもしれません。
そんな普通じゃない時代の只中にあって、パパスはちょっとした異端児でした。だってそのテーマは「ふつう」だったから。
オレはふつうが好き。でもね、今も昔も、ふつうこそ大事だし魅力的なんだ。たかが服だとオレは思ってる。着やすくて、飽きなくて、丈夫で、清潔。それでいいでしょ服なんて。あんまり他のこと、服に求めないでくださいよ。その代わり、服であることにかけては、絶対の自信がある。服は、服でいい。それ以上にあれこれやればきっとそれ以下になる。世の中のあらゆることが、ふつうであればもっともっと暮らしやすいんだけどね。
こちらは、パパスを立ち上げたデザイナーが雑誌のインタビューで語った言葉です。世界中で天才デザイナーたちが競い合うように創意の限りを尽くしていたこの時代の中で、あえて私たちは「ふつう」をキーワードにかかげ、華やかなファッションショーなどを開催することもなく、大人のためのベーシックで上質なカジュアル服を提案することにしました。そこで名付けられたブランド名がパパス。どんな意味か、わかりますか?
男たちの生き様を
ヘミングウェイに託して
もちろん「お父さんたち」で合っていますが、このブランド名にはもうひとつの意味が秘められています。それはアメリカ人作家、アーネスト・ヘミングウェイのあだ名が「パパ・ヘミングウェイ」だったこと。今やその作品に親しんでいる人も少なくなりましたが、アーネスト・ヘミングウェイとはノーベル文学賞を獲得した偉大な小説家であると同時に、そのアグレッシブかつ洗練されたライフスタイルで、戦後を生きる世界中の男たちの憧れを掻き立てた存在でした。洗いざらしのシャツに短パンという砕けた装いで常夏のハバナのバーに立ち寄り、フローズン・ダイキリを飲み干す・・・。パパスとは、そんなヘミングウェイの暮らしと装いをイメージして名付けられたブランド名だったのです。もしも彼が生きていたら、うちの服を着てほしいな、着てくれるだろうな、と。
「ふつうの服」と謳いながらも、そのものづくりに関しては、普通とはかけ離れていたパパス。世界中から選び抜いた最上の素材を使い、日本の職人たちが腕によりをかけて仕立てた洋服を、パパスは惜しみなくザバッと洗ってしまう。あたかも数年着込んだかのように仕上げて、初めてパパスの「ふつう」は完成するのです。パパスの服は、ふつうだけど、何かが違う。着るとリラックスできる。元気が出る・・・。そんなふうに言われる背景には、普通じゃないこだわりが秘められている。アメリカで生まれ、パリやキューバで暮らしたヘミングウェイのセンスも、どこかに注入されているのかもしれませんね。
パパスは
お洒落よりも
素敵な生き方を
提案した
皆さんの暮らしを素敵にする「ふつう」を増やすために、服づくり以外にも、たくさんのことをしてきたパパス。
ブランド発足と同じ1986年には、今も続く雑誌『PAPAS BOOK』を創刊。三國連太郎さんや谷啓さん、夏八木勲さんに代表されるリアルで格好いい〝おじさん〟を次々と起用して、単なるカタログではなく、パパスの考える成熟した大人の世界を表現してきました。そして〝全国のお父さんを元気にする服〟というコンセプトのもとに、スポーツ選手や職人さんを起用した広告を制作するようになりました。
1991年には、デザイナーズカフェの先駆けともいえる「パパスカフェ」を広尾でオープン。木材からタイル1枚に至るまで、ほとんどすべての材料をヨーロッパから取り寄せた上で、それらにユーズド加工を施し・・・といった実に面倒くさい手間をかけて、ヘミングウェイがふらりと入ってきそうな、パリの老舗カフェをイメージした空間をつくり上げました。
そんなパパスですから、もちろんショップ空間に対するこだわりも、並じゃありません。同潤会青山アパートの2階にオープンした表参道店はもうありませんが、2003年につくった丸の内店をご覧いただければ、パパスのやり方は、きっとわかってもらえるでしょう。
自画自賛するみたいでちょっと気恥ずかしいけれど、こうしたパパスのものづくりや活動が生み出してきたものは、単なるファッションじゃなくて・・・文化!?
これは2022年秋に発行された「PAPAS BOOK VOL.38」に掲載された巻頭言の一節です。
「しっくり」くる。言葉で表現すれば簡単なことのように感じるけれど、パパスに「しっくり」きているお客様たちは、年齢とともにじつに様々な経験を積み重ね、酸いも甘いも噛み分けている大人たちだ。パパスは誕生以来、もう36年もの長きにわたり、そうした大人たちの心と体にフィットし、さらには、彼らの生き方そのもの、人生そのものにフィットし続けているわけだ。
「そろそろぼくも、ふつうの服を着てみようかな?」
おじさんだろうと、若者だろうと、そう思ったときがパパスの出番。ふつうであって普通じゃないパパスの服と、その周辺にある文化の数々は、きっとあなたの心と体にしっくりと馴染み、これからの人生をもっと豊かなものにしてくれるでしょう。