ぼくのパパス、
わたしのノンノン。

Vol.9
「月光荘」三代目、
日比康造さんが
教えてくれた
「格好いい大人が
パパスを選ぶ理由」

パパスが久しぶりにつくった、超本格的なデニム生地のジーンズ。この自信作を誰に着てもらおうかな? と考えたときに、真っ先にその顔を思い浮かべた人物が、日比康造さんでした。パパスの原点を思い出させるような、野生味あふれるコラボレーションをご覧あれ!

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「月光荘」当主が着るパパス渾身のデニム

今回ご登場いただいた日比康造さんは、1917年に創業した名門画材店「月光荘」の三代目当主と、ブルースシンガーというふたつの顔をもつパワフルな人物。若かりし頃にはギター一本を抱えて世界中を放浪したというその自由な魂は、偉大なる100年企業の跡を継ぎ、社長としてその舵取りを担う今でも健在。まさに〝大人の不良〟というべきその姿は、パパスの創成期を支えたメンバーたちを彷彿させるのです。

そんな日比さんに今回着こなしてもらったのは、デニムのカバーオールとジーンズ。パパスがとことんこだわり抜いた、自慢の逸品です。使っている素材は、1953年につくられた〝幻の紡績機〟「石川台」で紡いだ糸を、これまた旧式のシャトル織機でじっくりと織り上げた別注のヴィンテージデニム生地。熟練職人が古い機械と対話しながら産み出した、貴重な代物です。ごつごつとした手応えのある格好よさと、じんわり滲み出すような温かみ・・・デジタルでは決して表現できないその魅力を、日比さんは袖を通した瞬間から見事に引き出してくれました。

風合い豊かな「石川台デニム」製のゆったりしたカバーオールと、わずかにテーパードした太めのジーンズを、タッセルローファーと合わせてセットアップで着こなす日比さん。パンツにはサスペンダーを合わせるのがこだわりです。肩が落ちていようが袖や裾を適当にまくりあげようが格好いいパパスのノンシャランなデザイン流儀が、日比さんの存在感と見事に融合。どこかフランスっぽい隠し味を効かせつつ、他の誰とも似ていない個性を表現しています。

  • BUYカバーオール ¥88,000
  • BUYジーンズ¥49,500
  • TELハット ¥26,400(4月上旬発売)
  • ※その他は日比さんの私物です。

PAPAS COMPANY TEL 03-5469-7860

パパスのスーツをストリートの感性で着る

それにしてもこの似合い方、タダゴトじゃない・・・と思ったらそれもそのはず、日比さんは日頃パパスのリネンスーツを愛用しているのだとか!

「もともとパパスの存在はカフェから知って、〝服もあるんだ〟程度の認識しかなかったのですが、偶然このリネンスーツに出合って、なぜだか惹かれてしまったんです。パッと見はおじさんっぽいけど、醸し出すオーラが違うというか。これを着てステージに立つこともありますよ」

日比さんが10年以上前に購入したパパスのリネンスーツ。ゆったりしたシルエットや低めのゴージ位置、芯地を極力省いたソフトな仕立てで、上質な生地の魅力をとことん活かした、まさにパパスならではのテーラードです。

とはいえ、リネンスーツならこうだろう、という決まりきった着こなしに落ち着かないのも、彼の性(さが)。あえてパンツの丈を極端に短くして、トレンドとはまた違う〝自分なりの今〟を表現していると語ります。

パンツの丈は、くるぶしどころかスネの位置! 現在「月光荘」で企画中だというホワイトのロングホーズを合わせるなどして、典型的なコロニアルスタイルとは違った、日比さん流の着こなしを楽しんでいます。

「本当に気に入った服と出合うときって、〝俺はこう着たい〟と自分が主語になるんじゃなくて、〝こいつはどう着られたいんだろう?〟と、服が主語になっちゃうんです。そして、俺だったらキミをこう着こなして、こういう過ごし方ができるよって。まあ、今っぽい考え方じゃないですけどね(笑)」

そんな日比さんのロマンチックなファッション観や自由なセンスは、若かりし頃に出会った大人の不良たちに強く影響され、養われたものだとか。

「ぼくが青春時代を過ごした90年代前半、まわりには格好よくておっかない大人たちがたくさんいたんです。彼らの世界にちょっとでも近付きたくて、片っ端から映画を観て、音楽を聴いて、洋服を買って、ときにはいけないことをして(笑)。アメリカ南部をひとりで旅したのもそういう衝動の一環だったのですが、現地で出会ったブルースマンたちのスーツの着こなしも印象的でした。普段は酒を飲んでひっくり返ってるけど、週末になると一丁羅のスーツにハットでキメて、教会に通ってゴスペルを聴く。その落差がカッコよかった。決まりごとの多いスーツという洋服を、どう組み合わせるかという自由さは、ストリートにあります。だから今日の着こなしも、ぼくにとってはストリートなんですよ」

パパスと月光荘に通じるブレないブランド論

そして日比さんは、パパスの背景にあるカルチャーを、このように推察します。

「パパスはそもそも、つくってた人が不良でしょ(笑)。だって真剣に生きていたら、どうしても振り子の動きは大きくなる。するとその逆サイドが、世の中的には不良ということになるんです。今日ぼくが着たデニムにも、そうした雰囲気はビシビシ漂っていましたよ。デニムといってもアメリカというより、ヨーロッパの文脈からくる不良性かな。最近めっきり少なくなった、モノから哲学を感じさせるブランドですよね」

確かにパパスを立ち上げたのは、激動のカウンターカルチャーの時代を駆け抜けた男たち。酸いも甘いも噛み分けた大人だけが持つ余裕が、このブランドの真骨頂と言えるのかもしれません。

「月光荘も、ただプロダクトをつくるだけじゃなくて、その背景にある哲学や世界観・・・もっと言えば〝世界とどういう関係でいたいのか〟を大切にしています。パパスはジャンルこそ違いますが、そういう意味では勝手にシンパシーを感じますね。だって、例え売れるとわかっていても、ブランドの哲学に反することは絶対にやらないですよね!? そういう意味ではお互い儲らないと思いますが、どうせいつかはみんな死んじゃうんですから(笑)、お互い朗らかに気分よく生きていきましょうよ!」

今回日比さんが撮影の場所として選んでくれたのは、月光荘の古い画材倉庫をリノベーションしたお店「月のはなれ」。美味しいお酒や本格的なクレオール料理ともに、壁面アートや日替わりによるミュージシャンたちの生演奏も楽しめる、フレンドリーで夢のようなサロンです。「銀座の、しかも8丁目にこんな空間があったのか!」という嬉しい驚きが待っています。
●住所/東京都中央区銀座8-7-18 月光荘ビル5階
●電話番号/03-6228-5189
●営業時間/14:00〜23:30(L.O.22:30)
※詳しいスケジュールやイベントの一覧はHPをご確認ください。

大人のデニムの決定版「石川台デニム」

あえて精錬作業を行わないコットン糸を用い、ピュアインディゴで11回にわたって染めあげた、「石川台デニム」。昔ながらの製法によって生まれたふっくらとした風合いを活かし、ゆとりのあるシルエットに仕上げたのが、こちらのカバーオールジャケットです。シンプルなデザインながら、随所でパパスらしい凝ったディテールが楽しめる一着です。

  • BUYカバーオール ¥88,000

PAPAS COMPANY TEL 03-5469-7860

ゆっくりじっくり織ることにより、12.8 オンスという重さを感じさせない柔らかな質感を実現した「石川台デニム」。その魅力をシンプルに味わえるのがこちらのジーンズです。本格的かつベーシックなデザインですが、いわゆるヴィンテージレプリカとはひと味違う。別注したセルビッジをところどころにあしらうなど、パパスらしい粋なアレンジが施されています。

  • BUYジーンズ ¥49,500

PAPAS COMPANY TEL 03-5469-7860

日比康造(KOZO HIBI)
1975年東京都生まれ。慶應義塾大学在学中に幾度となくアメリカ南部やアラスカを旅し、本物のブルースを体感。卒業後にシンガーソングライターとしてデビューする。2017年に、家業である銀座の老舗画材店「月光荘」の三代目を継承。シンガーソングライター、バイオリン弾き、経営者という3つの軸で活動中。早朝の多摩川沿いを散歩しながらひとり葉巻を吸うのが至福の時間。