Vol. 14
創業者は原宿の
ゼペット爺さん!?
マドモアゼルノンノンと
岸本加世子の半世紀
マドモアゼルノンノンが原宿に小さなお店を構えてから、なんと今年で60年! アルマーニよりもサンローランよりも歴史があるって、すごくない? 今回はそんな歴史の一部を紐解くべく、30年以上にわたってわたしたちの広告モデルを務めてくれている大切な存在、俳優の岸本加世子さんが登場してくれました!
- # 岸本加世子
- # マドモアゼルノンノン
- # パパス
70年代原宿、わたしが出会った
大好きなゼペット爺さん
――岸本さんはマドモアゼルノンノンの広告モデルを1990年代前半から務めてくださっていますが、もともとの出会いはいつだったんですか? さすがに社内でも当時のことを知る人が少なくなっていて(笑)。
岸本 芸能界デビューしたてだった10代の頃、たまたま原宿のお店にふらっと入ったんです。そうしたらそこにデザイナーの荒牧太郎さんがひとりでいらして。私はかわいい赤いトレーナーを買ったのかな。太郎さんはメガネを鼻にかけた、まるでピノキオのゼペット爺さんみたいな雰囲気の方で、どういうわけか仲良くなりました。
――1970年代後半ということですね。岸本さんはやっぱり、お洒落に興味津々だったんですか?
岸本 それがぜんぜん。当時上下ダボダボの服を着ていた私を見た太郎さんが、「お前はもっとキュートな服を着た方がいい」って。頼んでもいないのに(笑)、ワンピースをつくってくれたんです。
――当時を知る方々の言い伝えによると、当時のマドモアゼルノンノンはものすごくスノッブなお店で、「ここにはお前が着る服はないから帰れ」みたいな接客だったらしいですが(笑)、よく物おじせず入れましたね!
岸本 確かに太郎さんは「愛想のないおじさんだなぁ」とは思いましたけど(笑)、慣れちゃえば優しいし怖くはなかったです。当時の流行りとか芸能界のことなんかに全く興味がなくて、ただひたすらに自分がいいと思う洋服をつくっていらしたんじゃないかなぁ。ワッペンの位置や刺繍ひとつにも徹底的にこだわって、全部ご自分の手で縫い付けて。サイズはものすごく小さくて、今の半分くらいでしたね(笑)。撮影が終わったら帰りがけにお店に寄って、買いもしないのに何時間も喋って・・・みたいなところからお付き合いが始まりました。大人になってからは家も近かったし、広尾のイタリアンでしょっちゅうお食事もしましたね。
職人的なこだわりを永遠に貫いて!
――そんな、歳の離れたデザイナーさんとのお付き合いから学んだことって、あるんでしょうか?
岸本 私がお洋服に興味を持つようになったのって、マドモアゼルノンノンや太郎さんとの出会いがきっかけなんです。そこで教えてもらったのは、ファッションって流行を追うのも楽しいけれど、本当にいいものを手に入れれば、何年だって着られるということ。太っちゃって入らない以外はね(笑)。だからあのとき買ったノンノンの服が、わたしの家にはまだたくさんあります。10年、30年も着ているものばかり。ありがたいですね。ここまで長く着られるブランドって、そんなにはないと思います。
――トレンドに流されない、というのはマドモアゼルノンノンとパパスにおける、共通のテーマでもありますから。
岸本 パパスカフェができたときのこともよく覚えています。お店の空間も、そこに置かれている家具も、一見なんでもないように見せて、全部角を落とした曲線は職人さんの手づくり。すごくお洒落でしょ? 実はわたしの自宅も、ここの内装を手がけた職人さんにお願いしています(笑)。
――それはうらやましい(笑)!
岸本 それにしても、当時のあの小さなお店のブランドが今も続いていて、こうしてお付き合いさせていただいているってすごいですよね。わたしはあのとき、どうしてあのお店に入ったんだろうって、今でも不思議に思うんです。
――岸本さんが長くお付き合いくださっていることが、わたしたちもとても嬉しいです。
岸本 こちらこそありがとうございます。パパスカンパニーって、プレスの方や、ショップやカフェのスタッフ、そしてカタログの撮影クルー・・・。ノンノンやパパスを愛するスタッフのみなさんが長くいらっしゃるから、とても家族的な雰囲気ですよね。ときどき街で「わたしもノンノン着てます!」ってファンの方からお声がけいただくんですが、それがすごく嬉しくて。
――ありがとうございます! 最後に、60周年を迎えたマドモアゼルノンノンに、ひと言メッセージを頂けますか?
岸本 素材にこだわり、デザインにこだわり、いいものをつくることに対しては、決して妥協しない。太郎さんとマドモアゼルノンノンが貫いたそんな頑なさに、ファンはみんな惹かれていると思うんです。その姿勢を未来永劫引き継いでいってもらいたいですね。
岸本加世子
静岡県島田市出身。1977年に久世光彦演出のドラマ『ムー』でデビュー。以来ドラマ、CM、映画、バラエティ番組など幅広い分野で活躍を続ける。日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞をはじめ、ゴールデン・アロー賞、橋田賞など受賞多数。日本を代表する名俳優ながらも、その気取らない性格は、幅広い世代から親しまれている。