Vol. 5
コラムニスト
いであつしさんと
ポロシャツを肴に
ちょいと一杯!
さあ、今年も真夏がやってきました! 汗でベトベトになったワイシャツとは一刻も早くおさらばして、銭湯でサッパリしたらキンキンに冷えたビールをグイッ・・・! そんな真夏の夕方に一番ぴったりくる洋服といったら、もちろん肌触りのよい鹿の子素材を使った、パパスのポロシャツでしょう。というわけで、今日はアメカジ好きコラムニストとして知られるいであつしさんと、ポロシャツを肴にしつつ軽く一杯やってきました。
- # パパス
- # ふつうの服
- # ポロシャツ
- # アメカジ
1970年代、ポロシャツは黎明期だった
「俺は最初のポロシャツ世代だからさ、ポロシャツにはちょっとうるさいよ」
風呂上がりの幸せそうな表情で語るのは、1961年に生まれ、1980年代にはPOPEYE編集部で活躍したコラムニストのいであつしさん。第二次アイビーブームのど真ん中世代であり、アメカジカルチャーの申し子。ポロシャツが今のような大定番ワードローブになるまでの歴史を、まさに肌で知る存在です。
「70年代の前半までは、ワニとかペンギンのマークが入ってるポロシャツはオジサンが着てる服でダサくて、お洒落な人は誰も着てなかったんだよ。それをいきなり格好いい存在にしたのは、POPEYEの創刊に携わった松山猛さんだったね。松山さんが初期のPOPEYEで、フランス製のラコステをアメ横から探し出して、黒のポロシャツにアディダスのスタンスミスを合わせた。今までラコステなんて誰も注目してなかったのに、その記事によって突然東京中のラコステが消えたんだよ。それから流行ったのが、サーファーブームのときの〝アイゾット〟というアメリカ製ラコステ。80年代半ばのフレンチアイビーブームのときにはパリのエミスフェールが六本木にできて、夏になるときれいな色のオリジナルのポロシャツが何色も棚にグラデーションで並んでいて、当時付き合っていた彼女とおそろいで買ったなぁ。エミスフェールの白いポロシャツにネイビージャケットを着てホワイトリーバイスにパラブーツを履いて、ムリして彼女とホテルオークラに泊まったことがあった(笑)」
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〝アメカジの襟〟ってなんだ?
湯上がりの肌に心地よい、肌離れのよい着心地とゆったりしたフィット感のポロシャツ。
1970年代以降、様々なポロシャツが人気を集めてきましたが、その醍醐味といえるのが各ブランドのディテールや、それに付随した着こなしです。往年のインポート好きとしては、これを語るだけでも酒が進むというもの。
「もともと渋谷のチーマーだった東幹久が『オクトパスアーミー シブヤで会いたい』(1990年公開)って青春映画でラルフ ローレンの真っ白なポロシャツを着てるんだけど、こないだ観返したらそれが格好よくてさ。なんでかっつぅと襟の後ろを半分くらい立ててるんだよ。ただ、立ててはいるけど、決してピンとはさせてない。コインランドリーから出した洗いたてをそのまんま着るような感じが、アメカジの襟だと俺は思うんだよね。その後は、90年代のクラシコイタリアブームのときに赤峰幸生さんが提唱した、イタリア流のフレンチラコステの着方にもすごく影響された。赤峰さん、ネイビーを洗い込んで茄子紺みたいな色になったやつを、パツンパツンのサイズでボタンを全部外して、まるでVネックのTシャツみたいな感覚で着なくちゃダメだって仰ったの(笑)。それにサマーウールのグレーのトラウザースを合わせて、靴下もちゃんとはいて、スペルガのスニーカーを合わせてね。もう、すぐに真似したよ。本当はもう還暦すぎのオヤジだから、ボタンを全部留めてジャケットを着たり、マチャアキみたいにスカーフなんかを巻いてきれいに着たほうがいいんだろうけど、どうしてもラガーマン出身だから首も太いし、苦手なんだよね(笑)」
ポロシャツソムリエがパパスのポロシャツを分析する!
ファッションの原風景であるアメカジを軸にしつつ、ときにフランスやイタリアに浮気しながら、自身のポロシャツスタイルを築き上げてきたいであつしさん。そんな生粋のインポート派である彼の立ち位置からは、パパスの存在はどんなふうに見えていたのでしょうか?
「俺は静岡出身なんだけど、中学生のときに読んだ『anan』の原宿特集(1975年)に影響されて、当時原宿にあったマドモアゼルノンノンやハリウッドランチマーケットのショップを見に行ったことがあるんだよ。このあいだスタイリストの山本ちえさんが語っていた時代の、ちょっと後かな。ノンノンはうなぎの寝床みたいな小さなお店で、当時はスポーツウエアみたいなラインもあったから、最初はテニスショップかな?なんて思った記憶がある。実は俺、80年代はコピーライターもやってたんだけど、パパスがつくってた本(PAPAS BOOK)はよく見ていて、いつも〝やられた~〟なんて思ってた。ただ、今の若い子たちはあれを読んで驚いてるみたいだけど、俺からしてみたら当時はパパスだけじゃなくて、いろんなブランドがそういう格好いいことをやってたんだよ。ただ、パパスがすごいのは今でもそれを続けていることだよね。実際に着たのは今日が初めてだけど、最近丸の内のショップにも行ってみたりして、改めて気になってるかな」
ならば、今日着てもらったパパスのポロシャツの感想はどうでしたか? 実は私たちのポロシャツへのこだわりも、いでさんが名前を挙げた海外ブランドに負けてはいません。インダス河流域で栽培されたインド綿を使っているのですが、この綿には天然の油分「綿蝋(めんろう)」が含まれていて、これが潤滑剤の役割を果たして、独特のぬめり感とソフトな肌触りを産み出しているんです。実はこれ、25年ほど前につくられたポロシャツの復刻版なんですよ。
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「俺はインポートのポロシャツばかり着続けてきたから、どうしてもそれらとの比較でしか語れないんだけど、袖のフィット感や袖リブの幅は昔のフレラコに近い。襟の小ささや柔らかさはラルフ的かな。ちっちゃい襟で硬いとカッコ悪いから、くしゃっとなるくらい柔らかいほうがいいんだよね。ただ、ほどよくハリがあってしっかりと肉厚なんだけど、サラサラでドライタッチの着心地の鹿の子生地は唯一無二だよね。これは湿気の強い日本の夏にぴったりだと思う。風呂上がりに着ても気持ちいいもん。よく汗ダクですぐ乾く素材のポロシャツを着ていてビーチクが透けて見えてるオジサンがいるけど、やっぱり大人が着るポロシャツはコットン100パーじゃなくちゃ」
さすがはいでさん! これはポロシャツ好きにとっては実に参考になる、パパスとしても唸らされるご意見です。
※その他はいでさんの私物
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「でもさ、ポロシャツを着こなすのって本当に難しいんだよ。こないだ学生時代の同窓会に行ったとき、世代だからみんなポロシャツを着てきたんだけど、だいたい休日のだらしないオッサンっぽい感じなんだよね。まあ実際のところオッサンなんだけどさ。そうじゃない何人かは、ボタン全留めでスラックスに革靴を履くようないわゆる〝イケおじ〟スタイルなんだけど、キメすぎもまた嫌味じゃん。だから、そんなときにパパスのポロシャツっていいよね。きれいだけど、キメキメじゃない。パパスって同窓会の勝負服だと思うな。・・・なんかうまいことまとめたようなこと言っちゃったけど、もう一杯飲んでってもいい(笑)?」
PROFILE
いであつし
1961年静岡県生まれ。中学2年生のときに『Made in U.S.A catalog』を読んで以来のアメカジ好き。大学卒業後はコピーライター、POPEYE編集部員を経てコラムニストとして活躍。イラストレーターの綿谷寛さんとのタッグによる『Begin』のコラムは足掛け30年近くにも及び、現在は『ナルヘソ!ニッポン探訪』として連載中。
instagram @ideatsushi