ぼくのパパス、
わたしのノンノン。

Vol.25
最新カタログの
中身をちょい見せ!
デニム加工の匠
「豊和」で考えた
究極のSDGsって?

今月から店頭での配布がスタートされるパパスの最新カタログ。今回のWebマガジンは、パパスならではの企画が盛りだくさん詰まった入魂の一冊から、おすすめ記事の出張拡大版をお届けします! 国内トップのデニム加工工場「豊和」で、パパスのデニムがどんなふうに生まれてくるのか覗いてきました。

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〝デニムの聖地〟が誇る加工のスペシャリスト

岡山県におけるデニム産業の中心地、児島。江戸時代から綿花産業で栄えたこの町は、現代では温暖な気候と豊富な水資源を活かした、繊維産業と重化学工業が盛んな土地です。今回お邪魔したのは、このエリアの郊外にある工場。

今や海外でもその名を轟かせているデニムの聖地、岡山県倉敷市。古くから繊維産業や縫製業が盛んな土地柄をベースに、戦後からジーンズ製造がはじまり、1965年には初の国産デニムが誕生。今では児島地区を中心に紡績、織り、縫製、染色、加工に至るまで、デニムづくりにおけるすべての工程が集積した、世界でも類のないエリアです。

児島駅からクルマで30分程度。ぱっと見では洋服づくりの工場には見えない「豊和」の社屋。

今回私たちが取材した「豊和株式会社」は、その中でも染色や洗いといった〝加工〟に特化した工場。国産デニム黎明期である1965年に創業し、1978年にはストーンウォッシュ加工を世界で初めて開発した、まさに名門です。国内外の有名ブランドからの依頼が引きもきらないこの工場で、パパスのデニムはひとつずつ丁寧に加工されているのです。

児島の市街地から離れた「玉野」という古い港町の、さらに小高い山のふもとにあるその大きな工場で、私たちを出迎えてくれたのは、巨大な機械がずらりと並ぶ壮大な光景。そのスケールは一見すると洋服づくりの工場とは思えませんが、よく見るとそれらの機械はまるで、巨大なジーンズの洗濯機!

コンピューター制御されたウォッシュマシンが稼働する「豊和」の工場。約100人の職人が腕を振るう。どんなにエアコンを効かせても、工場の中はかなり暑い!

もちろん、いわゆる洗濯機さながら水で洗う機械や、昔ながらの石や薬品を使って洗う機械もあるものの、最近ではオゾンの力を使って色を落とす機械もたくさん導入して、できる限り水を使わない方向にシフトしているそうです。

ひと口に〝洗い〟といってもその工程は実に多彩。「豊和」はファッショントレンドやSDGsの流れを踏まえた様々な加工を開発して、風合い豊かで環境に優しいデニムを追求しています。

しかもその排水も可能な限り自社で浄水して、汚泥は堆肥につくり変えるなどの工程を経て、環境への負荷を最低限に抑えているのだとか。そう、近年のデニム加工における最大のキーワードはSDGs。これを厳格に守っていない工場は、今や海外のブランドをはじめとする大手企業からの仕事は請けられないといっても過言ではないのです。

工場から出る排水は自社で浄水。水と汚泥を分離させ、水は殺菌してから外部に排出したり、汚泥は堆肥につくり変えるなどして、環境になるべく負荷をかけないものづくりを心がけています。

デニム加工のリーディングカンパニーといえる豊和は、業界でも率先して水を極力使わない加工にシフトチェンジ。そうした中で生まれた加工が、水を全く使わないレーザー加工です。レーザー光線によって、予めコンピューターにプログラムした色落ちを再現するこの加工を使えば、ヴィンテージデニム瓜二つのヒゲも、クラッシュ加工もたやすく再現。職人の高齢化が進むこの業界にとっては、まさに未来への希望をつなぐ機械なのです。

こちらが「豊和」自慢のレーザー加工マシン。驚くほどリアルで繊細な加工ができる、業界が最注目する機械です。

職人の感性から生まれるパパスの刺繍デニム

しかし、「デニム加工において、もはや職人技は必要とされないのでしょうか?」という私たちの質問に、「豊和」で働く人たちは首を振ります。なぜならインディゴで染められたデニムは、湿度や水温など、環境によって性質を変える繊細な生地。季節によって色の落ち方も全く違うので、その取り扱いには熟練の職人技が求められるのです。

こちらは「乾燥加工」のエリア。

ベテラン職人の佐藤さんは、腕がいいのはもちろん、抜群のセンスで、様々なブランドから指名を受ける「豊和」きっての職人。これはヴィンテージデニムの醍醐味である色落ちを、シェービングで表現しているところ。

乾燥加工の工程には、多くの女性の職人さんも。

デニムを写真のような型に載せて加工を施すことで、リアルなヒゲの模様が浮き出てくる。もちろんこの型はブランドによって全く異なります。

グラインダーで裾のアタリを表現。ここも職人の感性の見せ所です。

薬品を染み込ませた布で擦ることで、リアルな色ムラを再現。

そんな職人技が一番ものをいうのは、乾燥した生地にシェービングなどでアタリやヒゲをつける工程。ブランドによって求める表現の具合は様々ですから、その意向を汲み取って再現するためには、技術のみならず優れた感性が必要。そのふたつを兼ね備えて、ブランド側のイメージを超えた加工を生み出せる職人には、ブランド側からの指名が集中するのだとか。

旧式の力織機を使い時間をかけて織り上げた岡山産デニムを「豊和」で加工した、パパス自慢のジャパンデニム! 素材、織り、縫製、加工、すべての工程に日本の職人技が詰まった、こだわりの一着です。気負わず着られるゆったりしたシルエットもいいね。

  • TELJACKET_¥93,500
    ※9月中旬入荷予定

生地のよさを活かしたナチュラルな加工と、流行にとらわれないシルエット、そして唯一無二の手刺繍がたまらなく味わい深い今季のデニム。ふつうだけどふつうじゃないこだわりが詰まった1本は、穿くほどに手放せない1本に育っていきます。

  • TEL PANTS_¥66,000
  • ※9月中旬入荷予定

もちろんパパスがつくるデニムも、ただの工業製品ではなく、そんな感性豊かな職人技の賜物です! 近年力を入れている刺繍入りのデニムはまさにその象徴で、肉厚の生地に職人さんがひと針ひと針刺繍を施し、ほかにはない風合いに仕上げる、愛情たっぷりの工芸品的アプローチ。ひとつの箇所を仕上げるだけでも15分ほどかかるというから、1本だけでも1時間以上の時間をかけてつくっているということ! 

フロントに4箇所、バックに2箇所施されたステッチは、紛うことなき手縫い! なるべく個体差が出ないように縫いますが、それでも個体によってその風合いも変わってくる、ある意味では一点もの。職人の手がほぼ介在しない最新のレーザー加工と、洋服加工の原点ともいえる手刺繍が、同じ工場で同時に行われているのが、「豊和」ならではの光景です。

「パパスのデニムは素材がいいから、あえて凝った加工はせず、素材を活かした加工を提案します」とは、このデニムの企画に携わった花田さんの言葉。こんな非効率の極みともいえる加工にチャレンジしてくれるのも、長年にわたる仕事を通してパパスというブランドを知り尽くした職人の存在と、両者の信頼関係のおかげでしょう。そう、この先どんなに世の中が変わろうとも、パパスのものづくりには日本の職人の技術が必要なんです。

右から企画の花田さん、職人の大濱さんと佐藤さん。パパスも全幅の信頼を寄せる、「豊和」のものづくりを担う3人です。

「豊和」を代表する腕利き職人である佐藤さんに、デニムづくりのやりがいを尋ねたところ、彼はぽつりとこんなことを語ってくれました。

「この仕事は毎日同じことの繰り返しなんですが、それでも作業がうまくいったり、皆さんに満足してもらえることが喜びなんですよ」。

もちろんハイテクな加工だっていいけれど、こんな職人さんの思いが詰まった特別なジーンズだったら、絶対に捨てられない。流行なんて関係なく、一生だって愛用し続けられる。そんなものづくりこそ、パパスは究極のSDGsだと思うのです。

パパスの秋冬カタログ
配布スタート!

今月から全国での配布がスタートしたパパスの秋冬カタログ。三國清三さんや柄本佑さんを起用したファッションページをはじめ、パパスイズムを感じさせるコンテンツが大充実した、雑誌のような一冊をご堪能ください。〝茶の効能〟をテーマにしたPAPAS BOOKも忘れずに手に入れてくださいね。