ぼくのパパス、
わたしのノンノン。

VOL.18
パパスのカタログを
長山一樹が撮る!
真夜中の打ち合わせで
わかった〝本質的〟
ファッション写真論

現在ファッション業界は、2025年の春に向けた広告やカタログの撮影で大忙し。もちろんパパスも春夏カタログを絶賛製作中です! 今回私たちが撮影をお願いしたのは、名実ともに日本トップと名高いファッションフォトグラファーにして、そのライフスタイルにも注目が集まっている、長山一樹さん。今回は撮影に向けた打ち合わせがあまりに刺激だったもので、その模様をちょっとだけ公開しちゃいます。トップフォトグラファーは、どんなことを考えて撮影に臨んでいるのか? そして次回のパパスのカタログがどんな写真になるのか? 楽しみにしていてくださいね。 

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その「人」と「服」はなじんでいるか?

閉店後のパパスカフェにグレーフランネルのスーツ姿で現れた長山さん。いつものパパスカフェが、まるで映画『ミッドナイト・イン・パリ』の世界に変わったよう!

――今日は夜遅くの打ち合わせですみません! 長山さんはカタログや広告など、アパレルブランドとお仕事される機会はとても多いと思いますが、ずばり何を気にして撮影してますか?

長山 うーん・・・内容によるかな・・・。でも、メンズに関していうと「人」と「服」とがなじんでいるかが一番重要だと思っています。〝着せられてる感〟が見えた瞬間に萎えるというか、偽物っぽくなってしまいますよね。だからぼくは、場合によってはスタッフさんに自ら提案することもあります。「これ、もうちょっと崩した方がいいですか?」とか、「このモデルさんにはネクタイがないほうが似合いますよ」とか。

――人と服とのなじみ感。パパスとしても長山さんの姿勢に共感します! 

長山 あとはフォルムですね。足の重心のかけ方ひとつ、ポケットへの手の入れ方ひとつで、同じスタイルでも全く格好よく見えなくなったりしますから。それにこだわっているスタッフがいるかどうかは、仕上がりを見れば一目でわかりますよ。

――長山さんのファッション写真の魅力って、コートを着たモデルをあえて座らせたりして、それでもコートを格好よく見せられる点にあると思っています。

長山 フランスあたりではよく観る風景ですが、コートを着て襟を立てたままカフェのテラス席に座ったときの、グニョッとしなる生地の質感なんて、最高に格好いいですよね。広告やカタログのお仕事では却下されがちなんですが、ぼくはそういう格好よさはちゃんと読者というかお客様に伝わると思っているんです。だから「長山が言うのならまあいいだろう」という、説得力のあるカメラマンでありたいですね。

――カタログや広告写真はチェックする人が多い分、無難にまとめがちですもんね。

長山 シワにはひとつひとつ意味があるのに、それを全部なくそうという人は、洋服のことをなんにも考えていないと思いますよ。でも、残念ながらけっこういるんですよね(笑)。

「惰性のルーティン」をいかになくすか

――モデルのポーズや表情についてはどう考えていますか?

長山 メンズの場合、いかにカメラを意識させずにカメラを見てもらうか、というのが大切ですね。あまり無駄なことをさせずに、ただそこにいる、という雰囲気で撮れたら最高です。つくり込めばつくり込むほど嘘くさくなっちゃうことも多いので。ぼくはモデルの〝仕事として出ちゃった〟ポーズだったら、シャッターを押しません。そして最初に「この人はこういうのを撮らないカメラマンなんだな」とモデルさんに知ってもらうんです。たとえば洋服を直されているときのちょっと気の抜けた瞬間を撮っちゃったり(笑)。極力〝惰性のルーティン〟を出させないように意識はしていますね。

――名言いただきました、「惰性のルーティン」! でも、わざとらしくしないように意識すると逆にわざとらしくなったりするから、難しいところですよね。

長山 たとえば男性のスーツを自然なしぐさで見せようとすると、パターンが決まってきて、逆にわざとらしくなっちゃうから難しいですよね。だから結局、被写体本人の佇まいが大事なんです。佇まいで納得させられたら、ただ突っ立っているだけで絵になるわけですから。今回撮るおふたりは、きっとそれでいいと思うんですよね。

――パパスも普通の洋服と、それを着るリアルな男たちの表情に長年こだわってきたので、本当にそう思います!

長山 ですから今回のような仕事は本当に嬉しいですね。

長山さんはパパスをどう撮る?

――長山さんといえばクラシックなスーツスタイルがアイコンですが、パパスというブランドについてはどういう印象をお持ちですか?

長山 ひと言でいうとオーセンティックですよね。決して若づくりした服じゃないし、いい意味でちゃんとおじさんっぽいところが気になります。実はロゴ入りのスウェットを持っているのですが、以前Instagramに投稿したところ、いつもの数倍の「いいね」が付きました(笑)。

長山さんが持っている唯一の〝ロゴもの〟が、光栄なことにパパスの定番スウェット! NEATのスラックスと合わせたコーディネートをInstagramにアップしてくれたその日は、丸の内店から白いスウェットがなくなりました。
※現在販売されているものとはロゴの入り方が少々異なっています。

  • BUYスウェット¥24,200

PAPAS COMPANY TEL 03-5469-7860

――その節はありがとうございました(笑)。

長山 特に昔のカタログを拝見すると、めちゃくちゃ格好いいですよね。ズボンもすごく太くて、ある意味今っぽい。そして〝私服に見える〟というのが、最も素晴らしいことだと思います。洋服の自然なシワのつくり方に関していうと、黄金期だった1990年代のJ.Crewのカタログを彷彿させます。ものすごい時間をかけてつくっているんでしょうね。

パパスが2000年代につくっていたカタログの、簡潔な構成に目を留めた長山さん。ちなみにこのときモデルをつとめていたのは、なんと広島カープの衣笠祥雄さん親子!

――実は弊社には職人的なスタッフがおりまして、スパッと決められるそうです(笑)。

長山 それはすごい。最近だとオーセンティックな服は白ホリ(白のホリゾント)だと絵にならないとか〝もたない〟とかよく言われて、結局陰影で雰囲気に逃げがちなんですけど、それって本末転倒だと思うんです。今回はパパスの服の魅力を引き出すために、白ホリで服のよさと人間とのなじみ方をしっかり伝える写真を撮りたいですね。

――納得です。白ホリでいきましょう! それでは大枠が決まったところで、細かい構成を相談させてください。ここから先は取材抜きで(笑)。

長山一樹

1982年横浜市生まれ。高校卒業後スタジオ勤務を経て、写真家の守本勝英さんに師事。2007年に独立した後は、ファッション雑誌や広告の分野で活躍。近年では、ビジュアルディレクターとして映像と写真を手がけるYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」が話題に。@mr_nagayamaのInstagramアカウントから発信するファッションやライフスタイルにも、注目が寄せられている。